なぜ現場の社長が自分でWeb集客をやるのか

仕事は現場で取るもの。特殊清掃や遺品整理の世界では、長くそう言われてきました。それでも今、依頼の入り口の多くはWebにあります。
この連載では、組合員のマインドカンパニー合同会社代表・鷹田了が、現場を持つ社長の立場からWeb集客の実務を書いていきます。私は一般廃棄物の収集運搬会社で8年働いたあと、2008年にこの業界に入りました。特殊清掃・遺品整理の現場は17年、2,000件を超えました。
第1回は、なぜ現場の社長が自分でWeb集客に取り組むのか、その理由からお話しします。
ポータルと紹介だけに頼ると、主導権を失う
ポータルサイトや紹介会社からの依頼は、始めたばかりの事業者には心強い存在です。ただ、依頼の入り口を他社に預けたままだと、いくつかの問題が積み重なっていきます。
- 価格で比べられる。一覧に並んだ時点で、依頼者が見るのは金額と口コミが中心になります。工程や機材の違いは伝わりません。
- 手数料が利益を削る。紹介料や掲載料は、作業内容に関係なく毎月・毎件かかります。
- ルールが変われば売上も変わる。掲載順位や料金体系は運営側が決めます。自社では止められません。
- お客様との関係が自社に残らない。依頼者が覚えているのはポータルの名前で、施工した会社ではないことも多いのです。
ポータルを使うこと自体が悪いわけではありません。問題は、入り口がそこにしかないことです。
なぜ外注ではなく、社長自身がやるのか
自社サイトを持とうとすると、まず制作会社やSEO業者への外注を考えると思います。外注が悪いのではありません。ただ、特殊清掃のサイトには、外注先だけでは書けない部分があります。
- 現場の判断は、現場にいた人しか書けない。体液がどこまで染みているか、床材をどこまで剥がすか、消臭がいつ終わったと言えるか。こうした判断の理由は、作業した人の言葉で書かないと伝わりません。
- 依頼者の不安を一番知っているのは社長。電話口で最初に聞かれること、見積のときに迷われること、作業後に感謝されること。それを毎日聞いているのは現場と社長です。
- 作って終わりにならない。サイトは書き足し、直し続けて初めて問い合わせにつながります。自分で手を動かせれば、費用をかけずに更新を続けられます。
すべてを自分でやる必要はありません。デザインや技術的な設定は任せてもよいでしょう。ただ、何を書くか、誰に向けて書くかは、社長が握っておくべきだと考えています。
現場経験は、そのままWebの強みになる
「文章は苦手だから」と尻込みする社長は多いと思います。けれど、Webで評価されるのは文章のうまさより、実際に経験した人にしか書けない中身です。
- 施工事例:どんな現場で、何を判断し、どう仕上げたか。写真の扱いに配慮すれば、これ以上の説得材料はありません。
- 工程と機材:消臭の方法や臭気の確認方法を具体的に書けば、価格だけで比べられにくくなります。
- 資格と根拠:IICRCなどの資格、組合の工法、測定値による判定。信頼の裏付けを示せるのは、実績のある事業者だけです。
現場で当たり前にやっていることが、依頼者や管理会社にとっては、会社を選ぶ決め手になります。それを言葉にして載せるのが、現場社長のWeb集客です。
組合員が自社で発信することの意味
組合員一社一社が自社サイトで正しい情報を出すことは、業界全体の信頼にもつながります。
特殊清掃は、料金や作業内容が分かりにくい業界だと見られがちです。根拠のない「消臭完了」や、不透明な追加請求の話もいまだに聞きます。だからこそ、工程や判断基準を公開する事業者が増えれば、依頼者は安心して比べられるようになります。
組合のネットワークで遠方・大規模の案件に連携して対応するときも、各社のサイトが整っていれば、紹介された依頼者が安心して相談できます。自社の集客は、自社のためだけのものではありません。
この連載で書いていくこと
次回以降は、次の順で具体的な実務を取り上げる予定です。
- 問い合わせにつながらない特殊清掃サイトの典型パターン
- 管理会社・不動産会社から選ばれるページ構成
- 資格・認証・組合加盟をWebでどう見せるか
見積や提案の示し方については、過去の記事「技術力が伝わる特殊清掃の見積・提案の作り方」もあわせてご覧ください。サイト運用の手順をより細かく知りたい方は、筆者が運営する「特殊清掃の現場社長Web集客ノート」で解説しています。
現場の仕事を、現場の言葉でWebに載せる。その積み重ねが、価格だけで選ばれない会社をつくると考えています。
